【社長インタビュー】完璧を求めて緊張が成長を生む「焼き鳥 松元」 Lita株式会社 代表取締役 松元 康二郎

「焼き鳥 松元」は天神、東京・丸の内にも出店し、多くのファンに愛され益々勢いに乗る人気店。
今回「焼き鳥 松元 天神店」で、創業者である松元康二郎代表取締役から直々に「残念だけどおいしいよ」というこだわりの焼き鳥をいただきながらお話を聞いた。
さまざまな経歴を経て、現在東京を含め3店舗を経営する松元康二郎の目は今何を捉えているのだろうか。その日常に、ひとつのヒントがあった。
この記事を書いたサラダボウラー

〈目次〉
“遊びだと思っていた”ゴルフにはまったある理由
「ゴルフは嫌いだった。なぜなら思った通りにいかないから。それが自分の性格的に嫌だった。それで趣味程度でハマってはなかったんだけど、うちを貸切してくださるお客様に誘われて行ったら、スマートで上手でルールやマナーが違った。
そのときは恥ずかしかった。ボールを探してもらったりもした。
これは迷惑をかけてしまう。上手になるのも礼儀」
礼儀やマナーに厳しいのは経営者として当然だという。
「それがあって今時間があればゴルフの練習をしている。そうなったらもう手から血が出るまでやった。毎日1時間でも30分でも、血が出て上手く打てなくても毎日行った。
そうすると、焼き鳥の修行してる時を思い出したよね。
当時を思い出すと“やりきるぞ”となる。練習にも気合が入る。
すると先生に真剣なのが伝わって、俺と他の人に教える内容が全然違っていた」
すぐに本気でやっているという様子が目に浮かんだ。
そして話が焼き鳥につながるのは、やはり経営者であり職人。
話は熱を帯びながら続いていく。
人と会うときは常に緊張

「ゴルフが上手な経営者は多い。みなさんマナーを守って身なりからきっちりしている。
そういう意味でゴルフは遊びじゃない。仕事だよね。
そういうときに仕事の話をすると、面白い話がどんどん出てくる。どんどんつながる。
ゴルフは一緒にいる時間が長い分、その人となり、性格がでる。短気な人、グリーンを直す人、なにもしない人、そこが面白い。それで自分を自制できる」
常に周りを見て自分を見直す姿勢が伺えた。
「あるとき一緒にゴルフをした上手な方がボールを拭いてまわっていた、その余裕感とその営業力にシビれた」
と、過去の経験を振り返る。
「人間緊張感がないと自己の成長はない。人と会う時は常に緊張」
取材陣の緊張に気づいたのか、「その緊張もいいね」と笑う。
100%完璧な日なんて1日もない
自然と焼き鳥の話題になっていた。
「集中するのは焼き鳥もゴルフも一緒。その代わり焼き鳥は長続きしない。焼いて2時間かな。炭火の近い所で焼くから気が緩めない。近ければ近いほど動けない。
だからずっと集中、炭を動かすの繰り返し」
炭の話をする松元は熱が上がる。
焼き鳥を焼く上で従業員にはこう伝えているという。
「人間のこころと一緒。ベースがきちっとできてたら、人として正しく生きるとか、心が純粋であったら、きれいな道を歩いていける。
焼き鳥も一緒。この強い火力を、一番いい状態を、こころだと思って調整しながら常に一番いい状態であれば、ぶっちゃけ誰でも焼けるんですよ。
だけどそれを一日中維持するのが難しい」
と楽しそうに話す。
「だから、100%完璧な日なんて1日もないよ。大体85点とか。5本並べてて1本気に入らないとかがある。完璧にならないから。100本焼いて85本いけたらいい。それでも何回かしかない。それくらい難しい」
そう、振り返りながら自らの言葉を噛みしめる。
「全部完璧に美味しくないとダメ」
その言葉と同じくして運ばれてきた焼き鳥に自ら渡して、
「食べり」
と一言。

こだわりの技が詰まったこの焼き鳥は言うまでもなくうまい。
下手な言葉より表情で感想を述べ、質問を続ける。
福岡は全国で最も焼き鳥店が多い県。そのことについて聞いてみた。
「うん、福岡はいいお店がいっぱいあるよね。
料理はそれぞれの店にファンがいるから、みんな正解なんよ。それぞれが正解。
誰がすごいとか関係ないのよ」
焼き鳥に対する確かな信念から、言葉が続く。
「自分たちが、どうお客さまに対してファンになってもらえるように毎日誠心誠意やるかの繰り返しだから。自分がやってることに自信を持って料理を出さなきゃ伝わるわけないじゃん」
当たり前のようにそう言う。今まさに食べた焼き鳥の味が、それをはっきりと裏付けていた。
完璧主義を貫く

経営について松元は、「ダメな所を正す、良くするだけじゃん」と言う。
「共通してるのは人の問題だよね。どう戦う姿勢にもっていくか。
店も会社もそうだけど、チームにどうできるか。
次に商品。その二つやね、人と商品。完璧を求めて全部正解」
完璧を求め続ける、そのこだわりについてこう語る。
「焼き鳥もそうよ。串(の先)切ってるでしょ。串の先焦げとるやん。それは美しくないなと思って。どこまで最後まで綺麗にみせるか、どこまで心を込められるか。
怪我するとかないかもしれないけど、それがお客様に対しての心遣い。
見て、キャベツも黒い所ないやろ。完璧を求めるからいいものができる」

松元のこだわりは、最大の心遣いだった。
「最後じゃんここが、鶏を飼ってくれて、捌いてくれる人がいて、細かく梱包してくれて、運んでもらって、うちで串を打って、最後完璧に焼いて出す。最後のこのひと切りが、うちのおれの考えというか哲学」
「最後までやれ」
社長はこうしろと言ってはだめ
そんな松元の完璧主義を貫くのは、並大抵のことではない。経営者としてどう従業員に伝えているのだろうかと聞くと「パワハラだね」と冗談混じりに笑って言う。

「でもそのくらいに真剣なんよ。今いてくれてるは奴らはわかってくれる。俺の気持ちを。
やっぱり人にものを伝えるとか教えるとか、昔はそうで、今はダメじゃないですか。
そんなので本物は伝わらないよ。
うちの従業員は自分たちの仕事だとわかっているからやる。だからおいしいものができる」
どこか嬉しそうにそう話す。
「おかわりちょうだい。今日は調子のよかごたる。昨日は全然だめやった(笑)」
経験が導いた「仕事ができるヤツ」とは
次々と運ばれる料理のそのほとんどが松元のメニューだという。
やはり従業員は余裕を求めてしまうのではないかと聞いてみた。
「それはいいんじゃない?それは従業員に求めちゃダメ。
会社が伸びていって、自分たちの環境が良くなっていったらわかるのよ。
おれがどんな仕事してるか。だから、社長がお前たちこうしろっていうことを言っちゃだめだよね」
ここで逆に質問を受けた。
「仕事のできるやつってなんだと思う?」
答えはすぐに飛んできた。
「レスポンスが早い。とにかく早く。スピードは付加価値だから。でも社員に売り上げを上げろとは言ったことはない」
「人間を磨け、次にスピード、そして無駄をなくす」

熱い思いを笑いを織り交ぜながら話す姿は、焼き場に立つ姿とは少し違うかもしれない。
などと思っていると、気づいたらあっという間にシメのスープが運ばれてきていた。
これがうちの料理
「正直がっかりした料理ないでしょ。これがうちの料理、飲食業はこの仕事をしないとダメ。(取材陣は)緊張してるなと思ったけど、今日はそれが良かったね」
「飲食業って楽しいよね」
こぼれ話 ー植木の話ー
植木屋としての経歴を持つ松元社長から最後にこんな思わぬお話も。
「植木屋で剪定する時大事なのどこだと思う?職人として。」
「一発目をどう切るか。スパッと決めてサクッと切れること。
タチの悪い枝を、一発目に引っこ抜けるか。それができるのがプロだね。
まあそういうことで、植木の話で(笑)」
今につながる植木屋時代の話は、過去でなく未来を語っていた。
【動画】社長に聞く!Lita株式会社 松元康二郎

■取材協力:Lita株式会社 代表取締役 松元 康二郎
焼き鳥 松元 天神店