小倉焼うどん発祥の店「だるま堂」復活!受け継がれる味とヘラ。

ちょっと足を伸ばしてその歴史の“今”を、焼うどんと一緒に味わってきたのでご報告!
この記事を書いたサラダボウラー

〈目次〉
北九州のご当地グルメ「小倉焼うどん」の歴史。

「角を曲がれば名店」そんな印象がある街、北九州。
焼きカレー、八幡ぎょうざ、戸畑ちゃんぽん、どきどきうどん、シロヤベーカリー。
最後は店名になったけど、福岡市内在住のわたしでもすぐにこれだけの名物グルメがでてくる。もちろん今回の「小倉焼うどん」もそのひとつ。
戦後間も無い1945年。初代店主弁野さんが、当時手に入りにくかった「そば」の代わりに乾麺のうどん“干しうどん”を使ったのがだるま堂の焼うどんのはじまり。
香ばしく奥深いその味が市民に愛され、2代目坂田夫妻が引き継いだだるま堂でしたが、2019年12月に坂田チヨノさんがこの世を去り、休業。
1年近く開くことがなかったお店ですが、伝統の味を守ろうと「小倉焼うどん研究所」が立ち上がり、クラウドファンディングでも支援を募るなどの活動を経て2020年7月に見事復活!
店舗も改装され、カウンターのみだったお店に2階席が増設!より多くの人々がだるま堂の焼うどんを味わえるようになりました。
郷愁のグルメ路地「鳥町食堂街」東側よりスグ。

そんな「だるま堂」は、日本初のアーケード商店街「魚町銀天街」に繋がる食堂街「鳥町食堂街」東側の入り口スグにあります。

1945年(昭和20年)にできたというこの横丁。
奥に伸びるグルメ街道もまた老舗の名店揃いですが、そんな赤提灯の誘惑を振り切って「だるま堂」の白暖簾をロックオン。入店ガラガラ。

…とか言いつつお持ち帰りゾーンが気になったよね!
ザッと確認したところ、向かって右手にあるのはオリジナリティ溢れる焼うどんパン。
ホットケースには何やら「だるま堂」と「研究所」の2種類の焼うどんが!
興味をそそられつつもここはアトマワーシ!
今度こそ迷いなく白暖簾を潜りましょうぞ。
改装により2階が増設された新・だるま堂店内。

明らか狭い店内に人影。
通常時のメンタルなら、怯んで客足が少ないタイミングを待つところですが、今回のわたしは対だるま堂用にカスタムされたメンタル。
意気揚々と引き戸をガラガラ。

空いてる…
じゃなくてお客さんが凪いたタイミングで撮らせていただきました。
改装されて綺麗になった店内、仕切り板は最近はデフォルト仕様ですね。
カウンター4席の奥には今回の改装で増設された2階へ続く階段が見えます。

横幅がほとんど肩幅な緑の階段を、圧倒的一方通行で登ると…

なんということでしょう!
改装前を知らないけど多分きっと匠の技でできた2階席は、テーブル2卓と写真に見えていない2席の計10席。
こちらのホワイトボードは…

「ご自由にお書きください」
というだるま堂ファンのコミュニケーション用掲示板。
「札幌」や「神戸」の文字も見えますね。流石「小倉焼うどん発祥の店」ということで、わたくし大坪も僭越ながら一筆入れさせていただきました。ちゅす。
2つの小倉焼きうどん。すべからく2つの「天窓」。

現在のだるま堂では、お品書きの通り2つの焼うどんが存在。
「だるま堂」はまさに先代までの味を継承し復刻させたもので、昔から変わらない干しうどんでおだしの効いたソーススタイル。
一方「小倉焼うどん研究所」の焼うどんは、ソースもパンチ強めの現代風になっているとのこと。
さらにメニューを開くとこんな記載がありました。

「小倉発祥焼うどんの定義」が7項目、おそらくだるま堂がベースになっているのでしょう。
そのうち5項目は必ず取り入れるべしと記載があります。
縛りつつも自由度があるのはとても素敵ですね。
自分が小倉焼うどんをやるなら7項目全部守るのかなーなんて想像を膨らませるより早く注文しちゃいましょう。
卓上に2つのソース。小脇にサクラビール。

迷った挙句「天窓(だるま堂)600円」をオーダーしたところで卓上に視線を落とすと、あるのは2種類のソースとだるま忍者。
これは味比べできるのはかなり嬉しい!
そしてだるま忍者は一味ではなく爪楊枝なのでかなりびっくりですw
そしてこちらも注文。

門司港地ビールの「サクラビール 600円」。
こちらは大正2年に九州発のビール工場で誕生したビールで、当時の成分表を元に作られたというこのビールは赤みがかった琥珀色。
飲むとその「サクラビール」という名の通り、華やかで可憐になった気分。ひとり食事の一杯は、このくらいのちょっと贅沢な小瓶が最高ですね。
さて、そろそろ焼うどん待ちの胃袋を満たしましょうかね。
「小倉焼うどん」発祥店に感じる発祥感で天窓崩壊。

こちらが小倉焼うどんの「天窓(だるま堂)600円」。
「天窓」とは焼うどんに目玉焼きをトッピングしたものの名称で、天窓から望む月に見立ててつけられたといいます。いい名!
更にだるま堂の天窓は、うどんごと小麦粉の生地で挟み込んで焼いてあります。
そんな天窓の朧月を見上げるではなく見下ろして、いよいよだるま堂の小倉焼うどんをいただきます。

うんうん。
これが、この味が発祥店の小倉焼うどん。
おおよそズルズルっと啜れないもちもちの麺は、乾麺ならではのもちもち食感ペタっと触感、味わう瞬間溢れる満足感。
香ばしく焼き入れられたソースは、出汁が前面に感じられるお初でもどこか懐かしい味。
うまいね。
お味と歴史を噛み締めながら、見下ろす天窓に朧月。
さあさあ、割り入れましょうか。

これが絶対のグルメ。
もちもちにトロトロが加わって、麺がようやくトロッと啜れました。
黄色ってうまい色だな…。
このだるま堂の焼うどん、一度に口に入れる量は少なめに。
小倉焼うどん発祥店の時間とお味を、ゆっくりまったり味わうのがおすすめでございます。
ご馳走様でした。
「焼きうどんパン」のテイクアウトは忘れずに。

お会計時に、思い出したように「焼うどんパン 200円」を注文。
人気ベーカリー店「グラティエ」のパンを使用したこちらのメニューは、テイクアウト限定。
挟まれた焼うどんにニヤリ。こちらはどうやら研究所味!
こっちもうまいね。
小倉に受け継がれるヘラと味。

鉄板前に立つ3代目店主になった「小倉焼うどん研究所」所長の竹中康二さんに、飾られたヘラについてお聞きしたところ、先代が愛用されていたヘラなのだそう。
鉄の街・北九州で、これ程すり減ってしまうまでその暖簾を守り続けた先代の想いが、こうして受け継がれ、飲食店苦難のこの時代に復活したことは、間違いなくこの街の誇り。
これからも絶えることなく新しく、守りながら進化し続ける「小倉焼うどん」。
また訪れる日がもう今から楽しみです。